鳥人ヒロミ先生の名作BL、成層圏の灯です。
シリーズで4冊出ていたけど、今は文庫2冊にまとまっているんですね。
いや~~これたった4冊だったの!?て改めてびっくり。
すごく濃厚で、初めて読んだときはBL大河ドラマを読んだような心地いい疲れを感じた記憶があります。
それもそのはずというか、これなんと10年もかけて描かれている(刊行されている)んですよね…!
ボリュームとしては単行本4冊なのに足掛け10年とは。
時間をかければいいというものでもないかもしれないけど、それだけ鳥人先生が思いを込めて妥協せず丁寧に描いていかれたんじゃないかなあと思います。
妙にリアルな世界観と人物像に、一冊目を読んだ当時はすごく衝撃を受けたのでした。
女性向けのいわゆる商業BLではありますが、「ファンタジーとしてのBL」というにはかなり生々しい筆致だったんですよね。
そういうのってなかなかなかったので、成層圏の灯というか鳥人ヒロミ先生に出会えてすごく嬉しかったのを覚えています。
遊び人の大学生佐伯とカメラマンを目指す喜瀬川との、なんともドラマチックで壮大なラブストーリー。
マジメそうな喜瀬川ですが、実は過去にとても重いトラウマを負っていて、そこに軽薄男だったはずの佐伯が振り回されていきながら、けんかしたり別れたり他の男と付き合ったりもしながら、それでも時間をかけ二人で強く愛を育てていくというお話です。
はっきり言って…疲れます。
ドキドキハラハラもモヤモヤします。
二人ともかっこいいけどリアルに泥臭い人間で、全然パーフェクトな王子様じゃないです。
だけどそれだからこそ、ただの人間だからこそ、長い紆余曲折を経て二人がつかむ幸せがまるで成層圏の幻の灯のようにとてつもなく尊く素晴らしく思えるんです。
キラキラふわふわした素敵な夢物語というわけではありませんが、その厚みのある世界に引き込まれ、すごい物語を読みきったぞ!という読後感に浸れるので、興味のある方はぜひぜひ読んでみていただきたいです。
※子供への性的虐待シーンがあります。
※リバありだし受け攻めというのが固定していないので、もしそういうのが苦手だったらご注意ください。