名作中の名作少女マンガであり私が腐ったきっかけのBLマンガでもあります 吉田秋生「BANANA FISH」

言わずと知れた名作中の名作。

読んだことのない人は読んで…今すぐ読んで!!という感じです。

別冊少女コミックで連載された一応少女マンガなんですが、内容はけっこうハードボイルドな青年漫画みたいな作品です。

謎の言葉「バナナフィッシュ」をめぐって巻き起こるストリートキッズやギャング、中国マフィア、政界や軍まで絡んだ手に汗握る抗争がメインストーリーとなっています。

BL的なおすすめポイントとしては、孤高の天才美少年・アッシュと、彼と行動を共にすることとなった平凡な日本人青年・英二の、友情を超えた魂の結びつきともいえるような関係がとにかく尊い!!!というところ…。

この後少しネタバレ的なことも書きますのでご注意↓

NYのストリートキッズのボスであるアッシュは天才的頭脳とずば抜けた美貌とカリスマ性を兼ね備えたまるで神のような少年なんですが、その内面はとても傷ついてぼろぼろになっています。

その彼の心の拠り所となるのは平凡だけど純粋な心をもった日本人・英二。

知力・体力などすべてにおいてアッシュのほうが圧倒的に優れているのに、そして何度も訪れるピンチにおいても英二はアッシュに助けられ一見アッシュのお荷物みたいになっているのに、本当に助けを求めていたのはアッシュのほうだった。

英二はアッシュのその傷ついた魂をつねにゆるぎない友情、いや愛でうけとめ、そして真に救済した…。

これからほんとネタバレの話しますね。

これは人間の生命とか一般的な人生とかを基準に考えたらとても残酷で、皮肉で、とてつもなく悲しい物語です。

――ここまで来たのに。

こんなに、すぐ近くに、手に届くところに幸せがあるのに。

それでも手に入らない。

…なぜなら死が二人を、アッシュと英二を別つのだから。

最終話、長い戦いを終えたアッシュは、…激しい戦いの日々をせっかく生き抜いたアッシュは、友人の側近である青年に(ほぼ無意味な理由で)あっけなく刺されて死んでしまうのです。

あの神々しいまでのカリスマ性をもったストリートギャングのボス・アッシュが、まるでそこらのチンピラみたいに簡単に犬死にしてしまうのです。

正直初めてこの最終話を読んだとき、わたしは一時間号泣しつづけました。声がかれるまで泣き続けました。

そしてほんと正直言って、その当時は作者の吉田先生のことを恨みました。…すみません、まだ子供だったもので。

けど、その最終話と同じ19巻に収録されている『光の庭』を読んで、ああこの長い長い物語はこの『光の庭』という一作のために描かれていたんだな、とすら思うほどの感銘を受けたんです。

アッシュは死ぬ間際に英二からの手紙を読みます。

そこには

「君は一人じゃない ぼくがそばにいる
ぼくの魂はいつも君とともにある」

と書かれていました。

アッシュはそれを読みながら幸せそうに、眠りにつくように死を迎えるのです。

英二は純粋な愛をアッシュに向けていたし、その手紙の言葉はすべて彼の心の声そのままだったんだと思います。

でも、でもですよ。

私がバナナフィッシュ以前に読んだり見たりしてきた物語は、どれもこれも愛する者を失った人はその後その悲しみから立ち直って、新しい誰かを愛するようになって癒されていく、そうあるべき、というものばかりだったんです。

だから『光の庭』でアッシュ亡きあとの英二の物語が語られるうえで、きっと英二もアッシュのことを忘れはしないとはしても、新しい誰かと新しい人生を歩んでいくんだろうなって思ってたんです。

ましてや二人は恋人でも夫婦でもなんでもない、「友人同士」だったのだから。

ところが!!!!!!!ところがですよ!!!!!!!

…『光の庭』で英二は死者を想いながら生きつづけることを、アッシュを忘れまいという気負いとか死者への罪悪感とか憐憫とかからではなく、とても自然に自分の人生のあり方として選んでいるのです…。

こんな愛の描かれ方がそれまであったかな!?!?

少なくとも私は知らなかった……。

それまでそういう生き方はネガティブで後ろ向きなものとしてしか描かれていなかった。そんなの本当の愛ではない、死者はあなたにそんなこと望んでいない、って言われていた…。

ここで私は思い知らされたのです。

彼らの関係は確かにカテゴライズするなら「友人」という関係だったかもしれない。

しかしそこには友人だとか恋人だとか家族だとかっていうカテゴリーが無意味になるほどのとてつもない魂の結びつきがあって、魂の結婚とも言えるような強いつよい結びつきがあって、それは生とか死とかすら超えるものであって、そしてアッシュ亡きあとも英二は確かにアッシュの魂とともにあるんだ。

…アッシュへのあの手紙に書いていたように。

私の目に英二の生き方がけしてネガティブなものとして映らないのは、英二が「死者」とともにあるのではなく、真実そこにアッシュの魂があり、アッシュの魂とともに「生きて」いるからなんだ…と。

はあ泣ける…;;;;

本当にこの作品はすごいです。

性別とか人種とか生死とか時間とかをこえて人と人とが結びつき、魂を救済しあうことを、とても熱く残酷なほどハードでクールな物語のなかでするりと描いているんです。

私はこの作品に出会っていわゆる「腐女子」になったんですが、ほんと悔いはないですし、今もつねに考え方とか萌え方の根底にバナナフィッシュが、アッシュと英二がいるのを感じています。

私にとっての宝物のような作品です。


BANANA FISH(1)【電子書籍】[ 吉田秋生 ]

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